こんにちは、聡です。
3.
聖武天皇の坐臥具
聖武天皇が起き伏しに使われた家具や調度品(坐臥具)、今年は脇息と寝台でした。
紫檀木画挾軾したんもくが の きょうしょく(ひじつき)
この上に敷いたのが。
正しくは、脇息ではなくひじつき。
博物館入り口で頂いた新聞によれば、こんな使い方だそうです。
なるほど肘を受ける天板が、脇息よりも長く幅狭で華奢な感じですね。
何でもこうした前に置く形は、中国・朝鮮半島に見られるのだとか。
細部に至るまで木工の粋を凝らした肘つきですが、名称の“木画”とは、紫檀のほか黒檀、
カリンなどの木地に木・竹・牙・角類など色調の異なる材を寄木細工風に組み合わせ
文様を表す技法です。
粗い画像ですが、>>><<<のような帯状の部分がそれです。
さて、天皇の最もプライべートな時と場を担うのが次のこちら。
白橡地亀甲錦褥残欠 しろつるばみきっこうにしきの じょく ざんけつ(寝台の敷物)上段
御床畳残欠ごしょうのたたみ ざんけつ 中段
御床ごしょう(寝台)下段
正倉院には2基が伝わり、ツインあるいはダブルベッドにして、天皇皇后が休まれたの
ではと、何年か前の正倉院展では2基が揃って出陳されました。
画像の中段は御床の上に置く、いわば畳マット、そして上段の錦でシーツのように
マットをくるんで用いたと推定されています。
その錦は、表裏共に亀甲の模様がきれいに残っています。
因みに白つるばみ色とは
こちら。
ここでの畳は現在の畳とは製法を異にしながらも、この十数年後の奈良時代770年には、
畳作りの巧みさを賞された職人の記録がある事からその頃には盛んだった事が窺えます。
4.
正倉院の武器・武具
正倉院の3つの倉のそれぞれに、武器の類が伝わっており正倉院展では必ず幾点もの出陳が
あって、勇壮さやあるいは造りの美しさ細工の精緻さなど往事の製造技術に目を見張ります。
中でも北倉では大仏への献納として、かつて太刀や弓、鎧など多くの武器や武具が収蔵され
たものの、764年、藤原仲麻呂(恵美押勝)の乱に際して出蔵されたまま、ほとんどが
戻らず、今に伝えられるものの多くは南倉に伝わるものです。
南倉収蔵品は伝来が不明ながら「東大寺」の銘のある事から、東大寺に備えられたものと
考えられているそうです。
次に、その北倉の数少ない武器の一つ。
漆塗鞘御杖刀 うるしぬりのさやの ごじょうとう(仕込み杖)
北倉に献納された天皇ご遺愛の百口の太刀の内、この聖武天皇のご遺愛の杖刀と同じく、
呉竹鞘の杖刀と金銀鈿荘唐太刀(
こちら)、合わせて三口だけが現在残っています。
漆葛胡禄 うるしかずらの ころく(矢入れ)上段右
箭や(矢)左
胡禄に箭を入れた状態 下段
東大寺の銘が入り寺の所用具と推定されます。
かずらで堅く細やかに編んだ風合い、お判り頂けるでしょうか。
他には数点の手鉾てぼこ が目新しい出陳でした。
5.
正倉院の鏡
ご遺愛品の18面が北倉に収まり全てが唐からの請来品、一方で南倉38面は国産も
加わり、形や材質も様々。
今回はその南倉から唐請来品の円鏡、方鏡2点の出陳。
鳥獣花背方鏡 ちょうじゅうかはい ほうきょう(海獣葡萄鏡)
伝来する全56面中の唯一の角型鏡。
鳥に獣、葡萄の精緻な鋳上がりが伝来の白銅鏡の白眉とされるそうです。
この文様は円形が大半で、方形鏡では極めて珍しいとのこと。
続きます。