未だ無いエレベーター、もし、付けるとなると、ここ。
渡仏して、大変な思いをする事の一番を挙げろと言われたら、
迷う事無く、“部屋までスーツケースを持ち上がること”と答えます。
ちなみに私の部屋は仏式2階、日本式でいうところの3階に位置しています。
エコノミークラスの制限一杯、20キロが詰まったスーツケースを上げるには人力しかありません。
初めての際、たまたま親切なムッシュがその場にいて、持って上がってくれました。
そう言うやり取りも味なものですが、そういつも幸運はころがってやしません。
リフト(エレベーター)が付いたならと思うのが、この時です。
RERやメトロでパリ入りした経験のある方ならお分かりかと思いますが、地上への階段を見上げながら、
この時ばかりは頑丈で鈍重なスーツケースを恨みたくなります。
次回は軽量な布製に買い替えてやろうと思うのが、この時です。
なのに、最初の総会でリフト取り付けの動議が出た旨、聞いたときには、実は悲喜相半ばでした。
なぜかというと。
よくよく考えると必要なのは滞在中の延べ2回の来た時と、去る時だけです。
エレベーターが付いたとしても、降りて来るのを待つ間に部屋にたどり着けそうです。
勿論、リフト本体に、取り付ける改装工事に、取り付け工賃、これらは当然我々現大家の分担 支払い、
更に、今後は管理費が計上されて来ます。
私の場合は利用頻度の割りに、負担が大きいと思ったのです。
もっとも、ここいらの事は不公平が無いよう計らいがあって、上階に行くにつれて、分担割合が
増すのですね。
こういった事も、総会資料に全部載っていて、2階と6階の同じ位の面積の部屋で比べると、6階が
ほぼ倍の負担割りになっていました。
幸か不幸か今回は沙汰止みになりました。
というか、リフトをらせん階段の間を通すにはそれ以下のサイズでなければなりませんが、現行の
ものだとその小さな物がないらしいのです。
今後更に小さなサイズの物が出現すれば、再燃するかもしれません。
仄聞するところに拠ると、こういった動議を撥ね付けるのはいつも、何とお年寄りなのだそうです。
上階のお年寄りに、身体が楽になると甘言で誘っても、年金生活のお財布の口を緩めるには至らない
ようです。
ちなみに数年前の熱暑の際、リフトの無い上階から、水を買いに降りるのを厭うた為に、脱水で
亡くなったお年寄りが、少なからずいたのだとも聞きました。